第7回 拘縮(こうしゅく)について
こんにちは。みなさんは「拘縮(こうしゅく)」という言葉を聞いた事はありますか?
拘縮は、ケガや病気などで関節を動かす機会が減少した時に、関節が硬くなりその結果関節の動きが制限された状態のことです。具体的には筋、腱、関節包(関節を覆っている膜)、皮膚などが縮み、そこにコラーゲン線維が絡みつくことにより伸びなくなります。また、筋力の低下とも深い関係があると言われています。今回は、この厄介な拘縮についてのお話です。
拘縮の予防
拘縮の予防には色々な方法がありますが、最も効果的な方法は立ったり座ったりする事です。
もしみなさんが、完全な寝たきりになってしまったとすると、関節の動きを維持するためには一日20分以上の持続的なストレッチが必要という研究報告もあります。逆に言えば、寝たきりになってしまったら全ての関節を毎日20分以上ストレッチし続けないと拘縮の発生は防げないということです。また、拘縮になってしまったら関節可動域運動に多くの時間を割いたとしても大きな改善は期待出来ないでしょう。
日常生活動作には、移動や移乗(歩行や乗り移り)、着替えや入浴、食事、排泄などによって足・肩・肘・手や口など全身の関節運動が含まれています。さらに筋肉の活動も得られるので筋力の低下も防げます。拘縮の発生には筋力の低下も深い関わりがあると考えられており、動く事によって筋力を維持することも非常に大きな意味を持ちます。ですから日常生活動作の中でなるべく関節を動かす事が大切です。
また、自分一人では体を動かす事が難しい場合、拘縮のケアが出来るのは身近にいる家族であり、生活と密接に関わるケアスタッフです。関節の動きや動作に詳しいリハビリスタッフと情報を共有し、周りの人達みんなが生活動作の中で拘縮を予防する意識を持つ事が何より大切です。いつもは車椅子で行っていたトイレも、少し時間がかかっても歩いて行ってみませんか。忙しい、人手が足りないなど、事情はそれぞれあると思います。しかし、その日々の努力が拘縮を防ぐことにつながる何よりの方法です。
それでも拘縮になってしまったら
繰り返しになりますが、拘縮は予防が第一でありそれに勝るものはありません。
しかし、それでも拘縮になってしまうケースはあります。
拘縮の治療にはどのような物があるのでしょうか?
拘縮の治療として選択される主な物としては、温熱療法や超音波療法などの物理療法が挙げられます。
温熱療法では、ホットパックや極超短波などで組織温を上げて血流を改善させます。血流が良くなると拘縮を起こしている組織の水分量が多くなります。そうして水分量が増えることにより硬くなった組織が伸びやすくなりますので、そこにストレッチ等の運動療法を組み合わせていきます。
超音波療法も温熱療法に区分される事が多いのですが、超音波は音波によって組織に振動刺激を与えます。温熱による血流の改善はもちろんのこと、振動という物理的な刺激を直接加えることにより組織を柔らかくします。絡みついたコラーゲンの線維を振動の力でほぐすようなイメージですね。ただ温めるだけの温熱療法より振動という物理的な力が及ぶ分、組織に与えられる影響は大きいと考えられます。
しかし、いずれにせよ拘縮を改善するには非常に時間がかかり(全く改善が見られない場合もあるかもしれない)注意が必要なため、医師や理学療法士などに相談しながら粘り強く対応していくことが必要です。