目標設定等支援・管理料とは?記入例とポイントを解説

2024年9月12日

「目標設定等支援・管理シート」を作成する際、どのように記入すべきか迷われている方もいるのではないでしょうか。目標設定等支援・管理シートはリハビリテーション実施計画書と同じように、リハビリを行うために欠かせない書類です。

この記事では、目標設定等支援・管理料の概要をおさえつつ、目標設定等支援・管理シートの記入ポイントについて解説します。

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目標設定等支援・管理料とは

「目標設定等支援・管理料」とは、患者様の状態や症状に応じたリハビリ方針・目標を設定し、その進捗を管理した場合に算定されます。 目標設定等支援・管理料によって算定される点数は初回で「250点」、2回目以降は「100点」です。

以下のリハビリ料を受ける要介護被保険者等の患者様が対象で、必要な指導を実施した場合に3か月に1回の算定が可能です。

・脳血管疾患等リハビリテーション料
・運動器リハビリテーション料
・廃用症候群リハビリテーション料

リハビリの目標設定は、医師だけではなく看護師や理学療法士、社会福祉士などの多職種と患者様との共同によって行われます。

目標設定等支援・管理料の算定には、医師を含めた多職種で「目標設定等支援・管理シート」を作成し、医師が患者様・ご家族に対して交付、説明、診療録への添付を行うことが必要です。 患者様とご家族に対して説明する項目は以下のとおりです。

1. これまでの患者様の経過
2. これまでの患者様のADL(日常生活動作)について
3. 今後の見通しについて
4. 今後どのような目標を立ててリハビリを行う予定か
5. 今後行うリハビリが目標に対してどのような関係があるのか

診療録には、説明を受けた患者様・ご家族の理解度やどのような受け止め方をしたのかを記入しましょう。

出典:厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)別添1 医科診療報酬点数表に関する事項」
出典:厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部を改正する件 別表第一 医科診療報酬点数表」

目標設定等支援・管理料には、「目標設定等支援・管理シート」が必要

目標設定等支援・管理料を算定するには「目標設定等支援・管理シート」の作成が欠かせません。 目標設定等支援・管理シートは、大きく分けて以下の5つの内容について記入します。

1. 発症からの経過
2. ADLの評価(FIMとBI)
3. 現在のリハビリの目標とその内容(心身機能・活動・社会参加ごと)
4. 今後の心身機能と活動、社会参加についての見通し
5. 介護保険のリハビリを利用する見通し

目標設定等支援・管理シートは、患者様に交付しその写しを診療録に保管します。

出典:厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)別添1 医科診療報酬点数表に関する事項」
出典:厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知) 別紙様式01(医科)」

「目標設定等支援・管理シート」の記入ポイント

目標設定等支援・管理シートはリハビリテーション実施計画書に比べて記入する項目は少ないですが、重要な書類であることに変わりはありません。 記入する際は、以下の3つのポイントをおさえておきましょう。

・BIとFIMの評価基準の理解
・状況に適したリハビリ目標・内容の設定
・今後の見通しとその対応について

ここではそれぞれのポイントについて詳しく解説します。

BIとFIMの評価基準をおさえておく

ADL評価の欄を記入する際は、「BI」と「FIM」の基準をおさえておきましょう。基本的にBIは「患者様が最大でできるADL」を、FIMは「患者様が普段しているADL」を参考にします。

BIはほとんどの項目が自立、一部介助、全介助の3種類に分けられるため、そこまで判断は難しくありません。

一方で、FIMは1〜7点の7段階に加えて、運動項目と認知項目の2種類のADLを評価する必要があります。 FIMの点数による介助レベルの基準の目安は以下の表のとおりです。

介助レベル具体的な介助レベル点数
自立レベル完全自立7点
修正自立6点
わずかな介助または見守り見守り5点
介助あり最小介助4点
中度介助3点
全介助レベル重度介助2点
全介助1点

ADLはリハビリによる効果を示すための大切な評価でもあるので、それぞれの基準の違いを踏まえたうえで記入します。 なお、認知項目の「コミュニケーション」と「社会認識」については、上記の基準とは異なるケースがある点に注意しましょう。

出典:厚生労働省「(参考)日常生活動作(ADL)の指標 FIMの概要」

それぞれに適したリハビリ目標・内容を設定する

リハビリ目標とその内容を記入する欄では、以下の3つの項目に適したものを設定しましょう。

・心身機能
・活動
・社会参加

「心身機能」とは、患者様の筋力や関節可動域、認知機能などの機能を指す言葉です。「活動」とは、患者様が生活するのに必要な動作のことで、家事や趣味活動なども含まれます。「参加」とは、患者様が家庭や社会で担っている役割のことです。

それぞれの記入例は以下のとおりです。

【心身機能の記入例】
・目標:麻痺側上下肢の随意性が上がるようになる
・リハビリ内容:麻痺側上下肢の機能を高める練習

【活動の記入例】
・目標:杖歩行が自立、家事動作を獲得(簡単な調理、洗濯物動作)できるようになる
・リハビリ内容:杖を使用した歩行練習、自宅を想定した家事動作の練習

【社会参加の記入例】
・目標:家族に対しての食事作り、洗濯ができるようになる
・リハビリ内容:自宅を想定した動作の練習、長時間の立位動作が行えるようにするための耐久性を高める練習

患者様の状況に適した内容を記入しましょう。

今後の見通しとその対応について記入する

目標設定等支援・管理シートでは、リハビリを実施したうえでの今後の見通しと、その際の対応について記入します。 退院後に介護保険を利用したリハビリサービスが必要なケースもあるでしょう。その場合は、多職種と連携して介護保険サービスを提供してくれる事業所を探し、情報を目標設定等支援・管理シートに記入する必要があります。

また、見通しに関しては「リハビリが順調に進んだ場合」や「うまく進まなかった場合」など、状況別に分けて記入しても問題ありません。

目標設定等支援・管理シートを作成する際の注意点

目標設定等支援・管理シートを作成するときに注意すべき点は以下の2つです。

1.目標設定等支援・管理シートを説明するタイミング
2.リハビリ目標の追加・修正について

ここではそれぞれの注意点について詳しく説明します。

目標設定等支援・管理シートの説明・交付はリハビリテーション実施計画書と同じタイミングで

目標設定等支援・管理シートを患者様やご家族に説明、交付するのは、リハビリテーション実施計画書と一緒のタイミングで行いましょう。 リハビリを行う際、リハビリテーション実施計画書について説明と交付をする必要があるので、そのときに目標設定等支援・管理シートも一緒に行います。

別々に説明、交付すると、医師だけでなくご家族への負担にもつながってしまうため、気をつけたいポイントです。

リハビリ目標は途中で追加・修正が可能

目標設定等支援・管理シートの「現在のリハビリテーションの目標」は、途中で追加・修正が可能です。患者様とご家族に説明、交付する前に記入が必要ですが、その後の面談にてリハビリの方針や目標が変わるケースがあります。

記入内容の追加・修正が必要だと判断した場合、新しい目標に変更しましょう。

まとめ

目標設定等支援・管理シートはリハビリテーション実施計画書と一緒に使用する機会が多く、リハビリを行うための重要な書類といえます。ぜひ今回の記事を参考に、患者様にあわせた目標設定等支援・管理シートを作成してみましょう。

執筆者プロフィール

内藤かいせい
理学療法士として患者様にリハビリを提供するとともに、全国規模の学会発表にも参加。 2021年にWebライターとして独立。臨床現場での経験をもとにした、医療分野でのわかりやすい情報発信を強みとする。身体のメカニズムや疾患の情報に精通し、健康、ヘルスケア、高齢者の過ごし方、フィットネス、栄養などのテーマに明るい。