リハビリテーション実施計画書の記入様式と注意ポイント
2024年9月12日
リハビリを実施するにあたって必要な「リハビリテーション実施計画書」ですが、どのように作成すればよいか迷う方もいらっしゃるかもしれません。リハビリテーション実施計画書を作成するには、対象の患者様の情報やリハビリの目的などを詳細に確認しておくことが必要です。
この記事では、リハビリテーション実施計画書を作成する目的や記入のポイント、注意すべき点などについてご紹介します。
リハビリテーション実施計画書とは
リハビリテーション実施計画書とは、医師の指示のもとにリハビリを行う際に、どのような目的・方法で実施するか記載した書類です。実施計画書にはリハビリ内容をはじめ、患者様の身体的な機能、ADL(日常生活動作)の状態などを記入します。
記入内容を、患者様本人またはご家族に説明し同意を得て交付することで、リハビリが開始されます。 リハビリテーション実施計画書の内容は、リハビリを行っている患者様の経過や目標を把握するための情報にもなります。
また、リハビリテーション実施計画書は以下の診療報酬を算定するときにも必要です。
疾患別リハビリテーション料
疾患別リハビリを開始する際は、開始後7日以内、遅くとも14日までに実施計画書を作成する必要があります。継続的にリハビリを要する場合は、3か月に1回以上ごとに内容を見直し、新しく作成する必要があります。新しく作成した計画書は、再び患者様本人またはご家族に同意を得たうえで再交付することでリハビリを継続することができます。
外来リハビリテーション診療料
外来リハビリテーション診療料は、状態が比較的安定しており、リハビリテーション実施計画書にて疾患別リハビリテーション料を提供している患者様が対象です。
特定機能病院リハビリテーション病棟入院料
特定機能病院リハビリテーション病棟入院料の算定時は、入棟時のFIMの運動項目を1週間以内に、また退棟時のFIM運動項目を記載したリハビリテーション実施計画書を作成します。
回復期リハビリテーション病棟入院料
回復期リハビリテーション病棟入院料の算定時では、入院後のFIMの運動項目を2週間以内に、また退院時のFIMの運動項目の得点を記載したリハビリテーション実施計画書を作成します。
出典:厚生労働省「保険診療の理解のために」
リハビリテーション実施計画書の記入ポイント
リハビリテーション実施計画書は記入すべき項目が多数あります。ここではリハビリテーション実施計画書をスムーズに作成するための3つのポイントをご紹介します。
・ 心身機能・構造は必要な箇所だけ記入する
・ リハビリの効果が明確となるようにADLを記入する
・ 目標・治療方針は具体的に記入する
「心身機能・構造」は必要な項目を記入する
「心身機能・構造」欄には、患者様の身体機能や認知機能などを記入します。 「意識障害」「運動機能障害」などの多くの項目がありますが、すべてを埋める必要はありません。該当する項目だけ記入しましょう。
たとえば、骨折をはじめとした運動器リハビリに当てはまる患者様の場合、「疼痛」や「筋力低下」の項目にはチェックが必要となるケースが多いでしょう。 一方で、脳機能に問題がなければ「高次脳機能」「記憶障害」などの項目はチェック不要です。
備考欄も設けてあるので、詳細を伝えたい場合はここを活用するとよいでしょう。
リハビリの効果が明確になるようにADLを記入する
リハビリの効果がわかるように、患者様のADLをよく確認し記入しましょう。 リハビリテーション実施計画書には「基本動作」のほかに、状況に応じた自立度を記入する項目があります。こちらはADLを「FIM」と「BI」の視点をもとにして記入します。
「FIM」「BI」は、リハビリの効果判定をするには欠かせないADL評価です。さらに使用している補助具や実施環境を記入する欄があります。 各動作の情報を詳細に記入しておけば、リハビリによる効果が明確になります。リハビリ効果を把握するためにも、患者様の動作やコミュニケーション面をよく確認しながら評価をしましょう。
目標と治療方針は具体的に記入する
「安全に歩けるようになる」「下肢の筋力をつける」などの漠然とした目標・治療方針だと、リハビリの進捗や効果をうまく把握できず、かえって非効率的にリハビリを進めてしまう恐れがあります。 「自宅内で杖なしで歩けるようになる」のような具体的な目標を立てておけば、それにともなった治療方針を細かく組み立てられます。目標や治療方針は具体的に記入しておきましょう。
また、最終的なゴールを詳しく決めておくことで、身体機能の変化に応じたリハビリが可能です。具体的な目標と治療方針、最終的なゴールを記入しましょう。
リハビリテーション実施計画書を作成する際の注意点
リハビリテーション実施計画書を作成するうえで注意しておきたいことは以下の2点です。
・実施計画書の作成者について
・実施計画書の署名について
ここでは、それぞれについて詳しく説明します。
実施計画書は必要に応じて多職種と協働しながら作成する
リハビリテーション実施計画書は医師が作成するものですが、必要に応じて多職種と協働しながら進めていくことも検討しましょう。理学療法士や看護師、社会福祉士などと連携をとりつつ、必要な項目を記入していきます。
実際の臨床現場では業務が忙しいこともあり、多職種が一度に集まってリハビリテーション実施計画書を作成するのが難しい場合があります。職種ごとに順番で記入ができるような工夫をしておくと、スムーズな実施計画書の作成が可能です。
多職種で作成したとしても、患者様やご家族への実施計画書の説明は医師が行う必要がある点には注意しましょう。
実施計画書の署名が困難なケースについて
リハビリテーション実施計画書を更新する際は、基本的に患者様、またはご家族に再び署名をもらう必要があります。しかし、以下のような条件では、例外として署名を求めなくても良いケースもあります。
・疾患や認知機能が原因で、患者様自身が署名することが難しい
・ご家族が遠方に住んでいたり多忙で署名が難しい
ご家族にリハビリテーション実施計画書の内容を説明し、同意を得たことを診療録に記載すれば署名は不要です。ただし、患者様にはじめてリハビリを行うときの最初のリハビリテーション実施計画書には署名が必要です。また、初回はもちろん、2回目以降でも計画書の交付自体はしなければいけないので、その点には注意しましょう。
まとめ
リハビリテーション実施計画書は、患者様の状況を把握しリハビリを効果的に行うため、そして診療報酬を算定するのに欠かせない書類です。リハビリテーション実施計画書は多くの項目を記入する必要がありますが、ポイントさえおさえておけばスムーズに作成できます。一方で、更新のタイミングや署名のルールなど、作成時に注意すべき点を把握しておけばトラブルを未然に防ぐことができます。 この記事がリハビリ施設の運営に役立ちましたら幸いです。
執筆者プロフィール
内藤かいせい
理学療法士として患者様にリハビリを提供するとともに、全国規模の学会発表にも参加。 2021年にWebライターとして独立。臨床現場での経験をもとにした、医療分野でのわかりやすい情報発信を強みとする。身体のメカニズムや疾患の情報に精通し、健康、ヘルスケア、高齢者の過ごし方、フィットネス、栄養などのテーマに明るい。