介護予防サービスとは?種類とサービス内容を解説

2024年9月10日

日本では高齢化が進み、多くの人が介護の必要性に直面しています。介護予防サービスは、高齢者が自立した生活を続けるための支援を提供する、重要な制度です。
本記事では、介護予防サービスの種類やその内容、介護予防サービスの対象となる方の条件、一般的な介護サービスとの違いについて詳しく解説します。

リハビリに関するご相談

介護予防サービスとは

介護予防とは、厚生労働省によると「高齢者が要介護状態等になることの予防又は要介護状態等の軽減若しくは悪化の防止を目的として行うもの」と定義されています。

引用:厚生労働省「介護予防について」

これを少し詳しく説明すると、高齢者が要介護状態に陥ることなく、可能な限り自立して生活を送れるようにすることです。
そのため介護予防サービスには、高齢者本人へのサポートはもちろん、地域など高齢者本人の周辺環境へのサポートも含まれています。

介護保険制度には、要介護認定の要介護1〜5の方が受けることができる「介護給付」と、要支援1〜2の方が受けることができる「予防給付」があります。
介護予防サービスは予防給付であるため、介護予防サービスの対象は要支援者となります。

介護予防サービスの種類

要介護高齢者を取り巻く環境は、核家族化の進行や介護する家族の高齢化などにより、常に変化しています。そのような状況に対応するには、高齢者を社会全体で支え合う必要があります。

そのため介護予防サービスにも、訪問サービス・通所サービス・短期入所サービスなど、さまざまな種類が用意されています。
以下に、主要な介護予防サービスを紹介します。

介護予防通所リハビリテーション

介護予防通所リハビリテーションは、利用者が通所施設(病院、診療所、介護老人保健施設など)に通いながら受けるリハビリテーションサービスです。

生活機能を向上させるための日常生活上の支援といった「共通的サービス」に加え、利用者の心身の状態に応じて個別的に「運動器の機能向上」「栄養改善」「口腔機能の向上」に関するサービスを組み合わせて受けることができます。

理学療法士や作業療法士といった運動・活動の専門職がいることも特長の一つです。また社会交流の機会にもなるため、精神的な健康維持も期待できます。

介護予防通所リハビリテーションは、定期的に通うことで効果が期待され、高齢者の生活の質を高める重要な役割を果たしています。
似た名称として、通所介護(デイサービス)がありますが、要支援者は利用することができませんので注意が必要です。

介護予防訪問リハビリテーション

介護予防訪問リハビリテーションは理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などが利用者の自宅などに訪問し、個別のリハビリテーションを提供するサービスです。

通所が困難な方でも、自宅で適切なリハビリテーションを受けることにより、心身機能の維持・回復や日常生活の自立を目指します。 また介護予防訪問リハビリテーションは高齢者の生活環境に合わせて行われるため、日常生活動作の改善に効果的です。
さらに、自宅などに訪問する特性上、家族へのアドバイスを行う場合もあります。

これらにより利用者の自立を支援し、健康的な生活を促進します。

介護予防訪問看護

介護予防訪問看護は、看護師などが利用者の自宅を訪問し、主治医の指示に基づいて療養上の世話や診療の補助を提供するサービスです。

具体的には、血圧・脈拍・体温の測定などによる健康と病状の管理、排泄・入浴・清拭などの療養上の世話、在宅酸素・カテーテルやドレーンチューブの管理・褥瘡の処理・リハビリテーションなどの医療的な処置やケア、さらに在宅での看取りなどが行われます。

介護予防訪問看護により、健康状態の悪化を早期に発見し、適切な対応を取ることができます。また医療機関との連携を強化し、利用者が在宅で安心して生活できるよう支援します。

介護予防訪問入浴介護

介護予防訪問入浴介護は、入浴が困難な利用者の自宅に専用の入浴設備を持ち込み、入浴介助を行うサービスです。

看護師や介護職員が、安全に配慮しながら入浴をサポートします。これにより身体の清潔を保ち、利用者ができるだけ自宅で自立した生活を送れるよう支援します。

介護予防居宅療養管理指導

介護予防居宅療養管理指導は、医師、歯科医師、薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士などが通院や通所が難しい利用者の自宅を訪問して、療養上の管理および指導を行うサービスです。

利用者ができるだけ自宅で自立した生活を送れるよう、体だけでなく精神的な状況や生活環境などを把握し、療養生活の質の向上を図ることが目的です。

介護予防短期入所生活介護

介護予防短期入所生活介護は、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)などが利用者の短期間の入所を受け入れ、入浴や食事などの日常生活の支援や、機能訓練などを提供するサービスです。

一般的には「ショートステイ」と呼ばれ、連続して利用できる日数は30日までとなっています(31日以上は全額自己負担)。

利用条件は、利用者の心身の状況や病状が悪い場合、家族(介護者)の疾病・冠婚葬祭・出張、家族(介護者)の身体的・精神的負担の軽減などとなっています。
利用者の健康維持や孤独感の解消だけでなく、介護している家族の負担を軽減することも目的としています。

介護予防短期入所療養介護

介護予防短期入所療養介護は、介護老人保健施設や病院といった医療機関などが利用者の短期間の入所を受け入れ、看護や医学的管理をしながら、介護や機能訓練、その他の医療や生活上の世話を行うサービスです。

介護予防短期入所生活介護と同じように、利用者だけでなく家族の介護の負担軽減などを目的としています。
また介護予防短期入所療養介護も一般的には「ショートステイ」と呼ばれ、連続利用日数は30日までとなっています。

介護予防特定施設入居者生活介護

介護予防短期入所生活介護は、特定施設に入居している利用者を対象として行われる、日常生活上の世話・機能訓練・療養上の世話のことを指します。

特定施設の対象となる施設は、有料老人ホーム、軽費老人ホーム(ケアハウス)、養護老人ホームです。
介護予防短期入所生活介護の指定を受ける有料老人ホームを、「介護付き有料老人ホーム」と呼びます。

介護予防・日常生活支援総合事業として、外部の指定事業者と連携してサービスを提供する施設もあります。

介護予防認知症対応型通所介護

介護予防認知症対応型通所介護は、認知症の利用者に対して、生活の世話や機能訓練を行い、利用者の孤立感の解消や心身の機能維持を図るサービスです。また介護する家族の負担軽減も目的としています。

認知症の利用者が、デイサービスセンターやグループホームといった通所介護の施設に通い、食事や入浴などの生活上の支援や、機能訓練、口腔機能向上といったサービスを日帰りで受けます。

介護予防小規模多機能型居宅介護

介護予防小規模多機能型居宅介護は、利用者宅への「訪問」、事業所への「通い」「宿泊」の3つのサービスを組み合わせて提供する介護サービスです。

利用者の状況や環境に応じて、利用者の選択を踏まえて柔軟にサービスを利用できます。日常の支援や機能訓練などを一貫して提供することにより、在宅での生活を継続しやすくなります。

介護予防認知症対応型共同生活介護

介護予防認知症対応型共同生活介護は「認知症グループホーム」と呼ばれ、認知症の利用者が共同で生活しながら受ける介護サービスです。
家庭的な環境と地域住民との交流の中で、入浴、排せつ、食事といった介護など生活上の世話と機能訓練を行い、能力に応じて自立した生活を営むことを目指しています。

介護予防認知症対応型共同生活介護では、1つの共同生活住居に5~9人の少人数の利用者が介護スタッフとともに共同生活を送ります。
なお介護予防認知症対応型共同生活介護は、要支援1の人は利用できないことに注意が必要です。

介護予防福祉用具貸与

介護予防福祉用具貸与は、利用者が日常生活を安全、快適に送るために、指定を受けた事業者が必要な福祉用具を貸与するサービスです。

利用者の状況や環境、希望などを踏まえ、福祉用具を選択するためのサポート、取り付け、調整などを行います。

なお要支援の方は、車いす(付属品含む)・特殊寝台(付属品含む)・床ずれ防止用具・体位変換器・認知症老人徘徊感知機器・移動用リフト(つり具の部分を除く)・自動排泄処理装置は原則、給付の対象外となるため注意が必要です。

特定福祉用具販売

特定福祉用具販売は、上記の福祉用具のうち貸与になじまない性質のものについて、福祉用具の購入費を保険給付するものです。

貸与になじまないものとは、他人が使用したものを再利用することに心理的抵抗感が伴うもの、使用によって元の形態・品質が変化し、再利用できないものを指します。
具体的には、便座や浴槽用の手すりなど、排泄や入浴に関わるものとなります。

介護予防・日常生活支援総合事業とは

日本は少子高齢化が進み、人手不足の時代が続いています。そのため高齢者の介護予防や日常生活支援を継続するには、本人の力や住民相互の力を引き出して、地域づくりを進めることが重要です。
こういった背景により、地域の支え合いの体制をつくり、要支援者などの方に対する効果的、効率的な支援が求められています。

そこで介護予防・日常生活支援総合事業では、市町村が中心となりながら、地域の実情に応じて住民などさまざまな方々が関わり、多様なサービスの充実を目指しています。

また介護予防・日常生活支援総合事業は、地域包括支援センターによる介護予防ケアマネジメントに基づき、これまでの要支援者だけでなく、介護予防・生活支援サービス事業対象者として、要介護認定などを省略して迅速にサービスを利用できるようにしています。

 ここでは、介護予防・日常生活支援総合事業の具体的なサービスであるサービス・活動事業と一般介護予防事業について、以下に解説します。

サービス・活動事業

サービス・活動事業は、日常生活の支援や社会参加の機会を提供するサービスを、地域のボランティアやNPO法人、民間事業者などと連携して提供され、地域全体で高齢者を支える仕組みを構築します。

サービス・活動事業には、以下の3つのサービスがあります。
①訪問型サービス:従前の訪問介護に相当するものと、それ以外の基準を緩和したサービスや住民主体による支援などの多様なサービスからなる

②通所型サービス:従前の通所介護に相当するものと、それ以外の基準を緩和したサービスや住民主体による支援などの多様なサービスからなる

③その他の生活支援サービス:栄養改善を目的とした配食や、住民ボランティア等が行う見守り、訪問型サービス、通所型サービスに準じる自立支援に資する生活支援(訪問型サービス・通所型サービスの一体的提供等)からなる

一般介護予防事業

一般介護予防事業は、「年齢や心身の状況等によって分け隔てることなく、住民主体の通いの場を充実させ、人と人とのつながりを通じて、参加者や通いの場が継続的に拡大していくような地域づくり」を推進しています。そのため、すべての高齢者が利用可能です。

引用:厚生労働省「介護予防について」

一般介護予防事業には、以下の5つの事業があります。

① 介護予防把握事業:閉じこもりなどの何らかの支援を要する方を把握する

② 介護予防普及啓発事業:介護予防活動の普及・啓発を行う

③ 地域介護予防活動支援事業:市町村が住民主体の通いの場などの介護予防活動の育成・支援を行う

④ 一般介護予防事業評価事業:介護保険事業計画の目標値に基づいて、一般介護予防事業の事業評価を行う

⑤ 地域リハビリテーション活動支援事業:通所・訪問・地域ケア会議・サービス担当者会議・住民主体の通いの場などへのリハビリテーション専門職などの関与を推進する

まとめ

介護予防サービスは、高齢者や要支援者が自立した生活を続けるための重要な支援です。多様なサービスが提供されており、それぞれのニーズに応じて利用できます。各サービスの内容や特性を理解し、適切なサービスを選んで積極的に活用することが、高齢者や要支援者の生活の質の向上につながります。
また運営事業者においては、対象となる高齢者や要支援者のニーズをしっかりと把握し、多様なサービスの中から適切なものを提案・提供することが求められます。

執筆者プロフィール

梅木駿太(うめきしゅんた)
合同会社Re-FREE 代表/経営コンサルタント/医療経営・管理学修士(MHA)
理学療法士として医療・介護の現場を経験したのち、介護事業所を有する医療法人の事務長として経営に従事。現在は特に50床以下の小規模病院・クリニック・介護事業所を中心に、経営コンサルティングを行っている。