リハビリテーション総合実施計画書の記入様式と注意ポイント

2024年9月12日

リハビリを行うための「リハビリテーション総合実施計画書」を、どのように取り扱うべきか迷ってしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。リハビリテーション総合実施計画書をスムーズに作成するには、様式の種類と記入すべき内容についておさえておくことが大切です。

この記事ではリハビリテーション総合実施計画書の記入ポイントや注意点などについてご紹介します。

リハビリに関するご相談

リハビリテーション総合実施計画書とは

リハビリテーション総合実施計画書とは、診療報酬の算定に必要な書類です。また患者様にリハビリを行うために必要な書類でもあるため、患者様の心身機能や活動レベルなどさまざまな項目を記載する必要があります。

そのため、リハビリテーション総合実施計画書は加算の算定で求められるだけでなく、患者様の情報やリハビリの経過などを把握する重要な役割も担っています。

リハビリテーション総合実施計画書で算定できる加算は、疾患別リハビリによるものだけではありません。書類の作成、およびリハビリ評価の実施によって、「リハビリテーション総合計画評価料」と呼ばれる診療報酬の算定が可能です。

リハビリテーション総合実施計画書はそのほかにも、以下の診療報酬の算定の際に必要なリハビリテーション実施計画書の代わりにすることができます。

・疾患別リハビリテーション料
・回復期リハビリテーション病棟入院料
・特定機能病院リハビリテーション病棟入院料
・外来リハビリテーション料

このように、リハビリテーション総合実施計画書はリハビリを行う施設にとってなくてはならない書類です。

出典:厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)別添1 医科診療報酬点数表に関する事項」

リハビリテーション総合実施計画書の様式

リハビリテーション総合実施計画書には以下の2種類があり、いずれかの書類を選択します。

・別紙様式21の6(またはこれに準じた様式)
・別紙様式23(またはこれに準じた様式)

別紙様式21の6

別紙様式21の6またはこれに準じた様式に、以下の①から⑥までのすべてと、⑦から⑫までのどれか1つの項目を組み合わせて記入します。

【すべて記入】
①疾患別リハビリ開始前のADL(日常生活動作) の状況
②FIM
③前回作成時からの改善・変化の程度
④1か月先のリハビリの目標と頻度、方針および留意点
⑤疾患別リハビリの実施にあたって、医師や看護師、理学療法士などが担う具体的な内容
⑥リハビリを実施しない場合に予想される状態の変化

【いずれか1つ以上を記入】
⑦疾患別リハビリ終了後の継続の有無と、そのリハビリ内容
⑧病棟でのADLの状況
⑨関節可動域や筋力、麻痺などの重症度の評価
⑩体重やBMI、食事摂取形態をもとにした栄養状態の評価
⑪自宅や病棟にて、患者自身で行うべきリハビリ内容
⑫FAI(Frenchay Activities Index)、ロコモ25など、患者の身体機能や活動を測定する評価
※「回復期リハビリテーション病棟入院料1」を算定する際は、⑩の項目が必須
別紙様式21の6は複雑になりやすいので、こちらを選択する際は記入する内容をよく確認しながら作成する必要があります。

別紙様式23

別紙様式23と同じ形式をした書類の「別紙様式21」があります。こちらはリハビリテーション実施計画書を作成するときに使用する書類で、リハビリテーション総合実施計画書と同様にリハビリの算定に必要です。記載内容が同じなので、使用するときに間違えないように注意しましょう。

出典:厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)別添1 医科診療報酬点数表に関する事項」
出典:厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)医科点数表 別紙様式01」

リハビリテーション総合計画評価料とは

前述したように、リハビリテーション総合実施計画書を作成すると「リハビリテーション総合計画評価料」の診療報酬の算定が可能です。

リハビリテーション総合計画評価料とは、医師や看護師、理学療法士などが共同でリハビリテーション総合実施計画書を作成し、リハビリ効果と内容を評価したときに算定するものです。
リハビリテーション総合計画評価料の種類と点数は以下の通りです。

・リハビリテーション総合計画評価料1:300点
・リハビリテーション総合計画評価料2:240点

出典:厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部を改正する件 別表第一 医科診療報酬点数表」

どちらも疾患別リハビリを実施する患者様が対象者ですが、それぞれ算定要件が異なります。それぞれの基準は以下の通りです。

【リハビリテーション総合計画評価料1】
心大血管疾患リハビリテーション料(Ⅰ)
脳血管疾患等リハビリテーション料(Ⅰ)、脳血管疾患等リハビリテーション料(Ⅱ)
廃用症候群リハビリテーション料(Ⅰ)、廃用症候群リハビリテーション料(Ⅱ)
運動器リハビリテーション料(Ⅰ)、運動器リハビリテーション料(Ⅱ)
呼吸器リハビリテーション料(Ⅰ)
がん患者リハビリテーション料または、認知症患者リハビリテーション料
の算定に必要な施設基準に適合している。
また、医師や看護師、理学療法士などの多種職が共同してリハビリテーション計画を策定し、以下のいずれかの場合に、患者様1人につき1ヶ月に1回に限り算定する。

・心大血管疾患リハビリテーション料、呼吸器リハビリテーション料、がん患者リハビリテーション料もしくは認知症患者リハビリテーション料を算定するリハビリテーションを行う
・介護リハビリテーションの利用予定でない患者様に対して、脳血管疾患等リハビリテーション料、廃用症候群リハビリテー ション料または運動器リハビリテーション料を算定すべきリハビリテーションを行う

【リハビリテーション総合計画評価料2】
脳血管疾患等リハビリテーション料(Ⅰ)、脳血管疾患等リハビリテーション料(Ⅱ)
廃用症候群リハビリテーション料(Ⅰ)、廃用症候群リハビリテーション料(Ⅱ)
運動器リハビリテーション料(Ⅰ)または運動器リハビリテーション料(Ⅱ)
の算定に必要な施設基準に適合している。
また、医師や看護師、理学療法士などの多種職が共同してリハビリテーション計画を策定し、介護リハビリテーションを利用予定の患者様に対して、脳血管疾患等リハビリテーション料、廃用症候群リハビリテーション料または運動器リハビリテーション料を算定すべきリハビリテーションを行った場合に、患者様1人につき1ヶ月に1回に限り算定する。

「介護リハビリテーションを利用予定の患者様」とは、要介護被保険者であり、各疾患別リハビリテーション料で規定されている算定日数の3分の1を経過した期間にリハビリテーションを実施している患者様のことをいう。
リハビリテーション総合計画評価料は1か月に患者様1人につき1回までの算定が可能です。

出典:厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部を改正する件 別表第一 医科診療報酬点数表」

リハビリテーション総合実施計画書の記入ポイント

リハビリテーション総合実施計画書を作成する際は、多くの項目を記入する必要があります。そのなかでも重要となるポイントは以下の通りです。

・心身機能を細かく評価する
・ADL面を2種類に分類して記入する
・患者様やご家族の希望に沿ったリハビリ目標を立てる

ここではそれぞれのポイントについて解説します。

心身機能を細かく評価する

「心身機能・構造」の欄では患者さんの状態を細かく評価し、当てはまる内容を記入しましょう。

別紙様式23ではチェックリストに加えて、具体的な内容を記入することができます。

別紙様式21の6では現在の状況だけでなく、「活動への支障」と「将来の見込み」についての項目があります。活動への支障の有無は、リハビリの優先度を決めるための参考になります。将来の見込みは、リハビリを通して今後どのような予測が立てられるかを踏まえたうえで記入することが大切です。

この心身機能面をおさえておくことで、患者様の状態が明確に把握しやすくなります。

ADL面を2種類に分類して記入する

別紙様式23の「活動」の欄では、ADLを「している活動(FIM)」と「できる活動(BI)」の2種類に分けます。 「している活動」は、患者様が普段の生活で行っているADLの自立度を記入します。一方で、「できる活動」は患者様ができる限界の動作を記入します。この2種類の違いを踏まえ、ADLを評価しましょう。

別紙様式21の6では、「している活動」に加え、リハビリの実施後に期待できる「将来の見込み」を含めた特記事項の欄が用意されています。ADL面はリハビリによる変化が明確になる要素なので、項目にあわせ正確に記入しましょう。

患者様やご家族の希望に沿ったリハビリ目標を立てる

患者様本人やご家族の希望を踏まえたうえで、リハビリの基本方針や目標を記入しましょう。抽象的な目標だとリハビリの内容にブレが生じてしまい、思うような効果が得られない恐れがあります。リハビリの方針を固めるためにも、明確な目標を記入することが重要です。

別紙様式23には「目標(到達時期)」の欄がありますが、この項目を埋めておくとリハビリ方針が明確になります。

別紙様式21の6ではリハビリ目標を長期と短期に分けて記入します。短期目標では最終的なゴールを指標としつつ、3か月間のリハビリ目標を目安にして選択しましょう。

出典:厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)医科点数表 別紙様式01」

リハビリテーション総合実施計画書を作成する際の注意点

リハビリテーション総合実施計画書を作成する際の注意点として、書類の署名があげられます。

リハビリテーション総合実施計画書の作成時は患者様、またはご家族に説明し同意を得たうえで署名をする必要があります。

しかし、患者様自身での署名が難しく、ご家族の都合や距離の問題によって病院に来ることができないケースもあるでしょう。その場合、2回目以降であれば例外として署名を求めなくとも良いとされています。その際は、電話でリハビリテーション総合実施計画書の内容とリハビリを継続することを説明し、同意を得た旨を診療録に記入します。

ただし、リハビリテーション総合実施計画書の交付自体は行わなければいけません。

出典:厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)別添1 医科診療報酬点数表に関する事項」

医療・介護リハビリテーション計画書の共通化

令和3年3月の厚生労働省の発表により、リハビリテーション実施計画書の「別紙様式21の6」の内容が変更されました。この変更によって別紙様式21の6は、介護保険のリハビリテーション実施計画書で用いられる「別紙様式2-2-1」と同じ内容になりました。

そのため、別紙様式21の6は医療と介護の両方を担うためのリハビリテーション実施計画書として位置づけられます。 医療から介護保険のリハビリに移行する際、実際に整合性がとれていれば、例外として別紙様式2-2-1をリハビリ計画書とみなして算定が可能です。

変更後は、「環境因子」と「社会参加」の欄が削除され、代わりにリハビリ目標の欄に「心身機能」「活動」「参加」について記入する項目が増えました。

このように、診療報酬改定によって書類内容が変更されることはよくあります。今後も制度に関する動向を定期的に確認していきましょう。

出典:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定Q&A(Vol.2)」

出典:厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」等の一部改正等について」

まとめ

リハビリテーション総合実施計画書は一見複雑にみえる書類ですが、記入ポイントを踏まえたうえで多職種と連携することで、スムーズに作成が可能となります。今回の記事がリハビリテーション総合実施計画書作成のお役に立ちましたら幸いです。

執筆者プロフィール

内藤かいせい
理学療法士として患者様にリハビリを提供するとともに、全国規模の学会発表にも参加。 2021年にWebライターとして独立。臨床現場での経験をもとにした、医療分野でのわかりやすい情報発信を強みとする。身体のメカニズムや疾患の情報に精通し、健康、ヘルスケア、高齢者の過ごし方、フィットネス、栄養などのテーマに明るい。